<お話を伺った方>
NTTコミュニケーションズ株式会社 ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門 櫻田駿さん
同 栗澤友菜さん
株式会社NTTドコモ 総務人事部 キャリアデザイン室 キャリア開発担当 法貴来海さん
NTTコムウェア株式会社 総務人事部 HCMセンタ 主査 和田直也さん
(以下、敬称略)

2022年7月、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(以下、コムウェア)は、お客さまへの提供価値の向上とさらなる成長をめざすために組織を再編成しました。これに伴い、2023年度からグループ合計1250名の新入社員研修が合同で行われることになり、ポータルとしてチームタクトを採用。育成担当者や研修会社など多くの人が携わり、参加人数も多い中、チームタクトのシステムの安定性や相互閲覧性の高さが寄与し、スムーズな研修運営を実現しています。

概要

<課題>

  • 研修準備や運営を効率化したい
  • 双方向性のある研修を実施したい
  • 大規模一斉研修のため、運用・セキュリティリスクに不安がある

<チームタクト選定のポイント>

  • 複数社からの研修資料を全グループに滞りなく配布するため、ひな形となるマスタールームを設置できる
  • 内定時期から、自己紹介シートなどにより新入社員同士の交流ができる
  • 初期の合同新入社員研修終了後も、所属部署の上長や育成担当者が研修時の様子を確認できる

<活用成果>

  • 出席確認のアンケート、研修の資料や教材の共有、事後課題の提出など、研修に必要な情報一元化できた
  • 運営を滞りなく行うことができた
  • リアルタイムで相互に閲覧できるため、学び合いが促進された

ドコモグループ25社の大規模合同新入社員研修で会社の垣根を越えた双方向の学び合いを促す

なぜ、新入社員研修をグループ合同で行うことになったのですか?

 櫻田:新入社員の皆さんには、「社会人としての基礎力」と「グループ全体でのシナジー」を育んで欲しいと考え、2023年からグループ合計25社で新入社員研修を合同で行うことになりました。

配属後の現場では、いろいろな人と関わりながら仕事を進めることが求められます。相手の意見に耳を傾け、それぞれの強みを活かし、協力して課題を解決していくといった、社会人の基礎力を身につけなければなりません。

グループ企業ではありますが、事業内容や社風、求める人物像はそれぞれ異なります。合同研修を通じて、異なる企業の社員と交流することで、互いに刺激をし合い、視野を広げる充実した越境学習を実現できると考えました。

また、学習の中でグループ企業がそれぞれどんなことを行っているのか理解し、シナジーを生むことも期待しました。

チームタクト導入前、新入社員研修においてどのような課題がありましたか?

櫻田:以前、ドコモでは紙のリフレクションシート(※)に、新入社員が自身の考えや課題をまとめ記入していたときもありました。チューターは、そのシートに直接コメントを書き込んで返却していました。しかし、手書きでのフィードバックは時間がかかり、シートの回収・配布作業も煩雑ゆえに、提出しなくなってしまう人もいました。

法貴:日報はハンドブックに手書きし、紙の資料を配布していました。コロナ禍初期は、紙媒体を段ボールで自宅に送るという、アナログな運用でした。一時期、共有ドライブの使用も試みましたが、セキュリティ面で課題がありました。研修の効率化とセキュリティ対策の両立が難しいと感じました。

 和田:コムウェアでも、コロナ禍前は紙媒体での研修資料の配布が中心でした。2020年以降はシェアポイントでファイルを共有する方式に切り替えましたが、新入社員が元のファイルを上書きしてしまう、誤って消してしまうなどの問題が発生しました。また、研修のクラスごとにフォルダーを分ける作業も煩雑で担当者の負担になっていました。

合同新入社員研修にチームタクトを活用することにした理由を教えてください。

櫻田:ドコモグループには、さまざまなシステム環境を持つ会社があります。そのため、グループ全体で同じファイルサーバーを使うことは難しく、合同研修で使用する資料や教材を効率的に共有できるシステムが必要でした。NTT Comではコロナ禍にオンライン研修を実施するようになったころから、ファイルや教材の共有、ワークの実施にチームタクトを使っており、その利便性とオンラインでも相互学習を促進する機能に魅力を感じていました。セキュリティ面でも安心できることから、今回の合同新入社員研修でもチームタクトを活用することにしました。

法貴:チームタクトを選んだ理由の一つに、日報やリフレクションシートへのコメントがしやすいという点があります。従来の運用と比べて、チームタクトでは、チューターが新入社員の日報やリフレクションシートにコメントを記入し、新入社員もそれに対して返信します。双方向性が高く効率的により深い学びを促すことが期待できます。オンラインで完結するため、運用の手間も大幅に削減できました。

櫻田:チューターと新入社員だけでなく、新入社員同士の学び合いも促進できます。各々のファイルで作業すると、ほかの人がどのように記載しているかわかりません。社員同士でもリアルタイムで記載内容を共有でき、学び合いを促進できることは大きなメリットだと思いました。

研修に必要なポータルを一元化でき、大規模でもスムーズな運営が可能に

チームタクトを活用した合同新入社員研修をどのように設計しましたか?

櫻田:合同新入社員研修は、約40人ずつ32クラスで行います。実施にあたって、コンペで研修会社を決め、研修会社とコードタクト社、ドコモグループ3社で綿密な打ち合わせを行いました。

研修会社からはチームタクトの機能を使ってより双方向を重視した研修を実施するための提案をいただきました。例えば、「トランプワーク」(※)という研修は、チームタクトの機能を使うことで実現した新たなコンテンツです。従来の研修では難しかった、個々の進捗状況を可視化できるワークを実現しました。

トランプワーク

※トランプワーク
 講師の指示通りにトランプを動かし、参加者同士で比較するワーク。オフラインでは実際のトランプを使用していたが、チームタクトの機能を活用することで、画面上でリアルタイムにトランプを操作できるようになり、参加者全員がオンラインでも同じ体験を共有できた。

栗澤:コードタクト社からの提案で、入社前から内定者同士が交流できる仕組みも構築しました。具体的には、チームタクト上に自己紹介シートを作成し、内定者の皆さんに記入してもらいました。任意でしたが、ほとんどの人が提出してくれています。

また、内定者課題として、半年間でスキルアップするための「アクションプランシート」も提出してもらいました。以前より構想していたものの、実施できていなかったことが、施策を具体化していただき実現できたのは大きな成果です。

アクションプランシート

※アクションプランシート
 入社までに入社後の目標やなりたい状態を言語化し、取り組むべきことや身に着けたいスキルが何かを考えて記載する。内定者期間中のe-learningで学ぶ内容とも紐づけ、目的を持って学ぶ・取り組む意識を醸成するとともに、同期の考え・取り組みを共有することで刺激し合う。

櫻田:オリエンテーションでは、コードタクト社の方から新入社員に使い方を説明する時間を設けました。内定時期に用意いただいた自己紹介シートを共有するほか、アイスブレイクとなるコンテンツも用意していただき、新入社員はスムーズにチームタクトを使いこなせるようになりました。

法貴:セキュリティ面では、二要素認証の機能を追加してもらいました。初期設定として一人ひとりの認証をするのは大変でしたが、新入社員の個人情報や研修資料を安全に管理するために必要な対策で、安心して使うことができました。

櫻田:チームタクトを活用することで、出席確認のアンケート、研修の資料や教材の共有、事後課題やリフレクションシートの提出など、研修に必要なポータルを一元化できました。チームタクトを見ていれば研修が成立するので、スムーズに運営することができ、非常にありがたかったです。

研修準備では、どのようなことを行いましたか?

櫻田:1250人が同時に研修を受けるため、各クラスのルームに対して同じ資料をミスなく配置することが重要でした。コードタクト社のアドバイスを受けて、各研修会社や研修担当が作成した研修コンテンツを一つにまとめた研修設計のマスターとなるルームを作成し、複製して全クラスに同じ内容を配布する運用をすることで、全クラスに漏れなく配置できました。資料は複数の研修会社がそれぞれのカリキュラムに対して作成しています。関係者が多い中、マスタールームにひな形を置くことで、全員が最新の情報にアクセスでき、状況を把握しながら進められました。

ただし、IT基礎研修などレベル分けされていたり籍元(所属企業)によって内容が異なる研修はマスタールームをつくれません。そのような研修には専用のルームを作成し、使い分けました。

栗澤:チームタクトは1つの課題シートで300人まで対応しています。NTT Com単独のときは1シートで対応できましたが、合同となったため1250人に対応する必要がありました。人数もクラス数も多いこれだけの規模の研修となると、ワークシートの作成と管理を効率的に行うことが課題でした。コードタクト社からオペレーション面でサポートいただきスムーズな研修準備ができました。

 法貴:チューターもチームタクトを使うのが初めてだったため、チューター研修にもコードタクト社の方に来ていただきました。ワークシートの作り方や段取りなどを対面でレクチャーしてもらえたため、すぐに使えるようになりました。

マスタールームの複製イメージ

情報をオープンに、個人の状況を把握可能に

 ―研修が始まり、運営においてどのような効果がありましたか?

法貴:内定者として自己紹介シートで事前に交流があったことで、研修開始時には既に良い雰囲気でした。フリーページに、写真を貼るなど工夫して記入している人もいました。新入社員へのアンケートでも、自己紹介シートは好評で、グループ会社間の横のつながりの構築にも役立っています。

栗澤:内定者同士で自己紹介シートに「いいね」し合うことで、入社する前から親睦を深めているようでしたね。内定者向けのオフラインイベントで交流を促進する良いきっかけになったようです。実際に会う前から、オンラインでつながりをつくる仕組みができています。

櫻田:チームタクトを使うことで、研修中の進捗状況や課題の内容をリアルタイムで把握することができました。研修講師と新入社員、新入社員同士の学び合いを促進する効果がありました。

栗澤:同期がシートに書いた内容を、ファイルを開かなくても一覧で確認できるのも大きなメリットでした。難易度の高いワークで手が止まっている人が、ほかの人が書いているシートを見て考え方を理解し、ワークに取り組み始めるケースがありました。同期同士の学び合いになっているのだと思います。

また、チームタクト上で活発に議論されていると、人事部だけでなく講師にも伝わります。講師からも、チームタクトを活用した研修は効果的だったという声が寄せられています。

チームタクトの活用により運営コストも削減できました。以前使用していたファイル共有ツールは、研修ごとにグループをつくり、都度申請して招待する必要がありました。特に、研修会社など外部の関係者を招待する際には煩雑な手続きが必要でした。チームタクトでは、一度登録すれば、ルームは自由につくれます。権限設定もしっかりでき、研修担当者の権限の中で多くの操作を行うことができます。

チューターのクラス運営の様子 モチベーションビンゴワーク

研修後もチームタクトを活用していますか?

櫻田:研修後のOJT期間中も、リフレクションを継続し、経験学習サイクルの定着化を図っています。また、新入社員研修後の研修でもチームタクトを使っています。過去の記録を振り返ることができるため、自身の成長を可視化することができます。

配属先の上長、トレーナー、メンターなど、育成に関わる社員にもチームタクトのアカウントを配布しています。これにより、新入社員の取り組み状況を把握できるとともに、研修中のリフレクションシートや提出課題なども確認できます。これまで、全体の育成報告のリポートは関係社員に共有していましたが、個人に関する情報は共有していませんでした。チームタクトの導入により、配属後の組織でも新入社員一人ひとりの状況の把握ができるようになりました。

法貴:ドコモでは、新入社員研修後は、各組織に任せていたため、部署によってリフレクション施策に差がありました。チームタクトで全員が同じツールでリフレクションできることになり、均質化を図ることができました。

経験学習サイクル

次世代リーダー育成、AI分析、そして人事運用へ

新入社員研修以外では、チームタクトをどのように活用していますか?

櫻田:新入社員研修だけでなく、グループ合同の次世代リーダー育成のためのリーダーシップ研修でも活用を始めました。そのほか、ドコモとNTT Com、コムウェアの3社合同ダイバーシティ研修、NTT Comのグローバル人財育成でも使っています。これらの研修では、ワークシートや振り返りなどで活用しています。

 ―今後、どのようにチームタクトを活用していきたいと考えていますか?

栗澤:若手向けの通年施策の中で、2024年度入社の新入社員研修から、全社員が使えるようになりました。今後は、若手社員向けの通年施策として、チームタクトをさらに活用していく予定です。

当社の新入社員の育成は2年間かけて行われます。2年目の最後には、総まとめとしてチャレンジングな目標を立てて発表する機会を設けています。2024年度入社の新入社員は、2年間一気通貫できるプラットフォームとしてチームタクトを活用し研修内容や自身の成長を記録していきます。最終発表も、チームタクトで共有し、互いに学び合う予定です。

法貴:今後は上長を巻き込んでいきたいと考えています。リフレクションに対して上長や育成担当者がコメントすることで、新入社員と上長とのコミュニケーションを活性化させたいと考えています。今はまだ、上長や育成担当者も使い方に慣れていません。私たちがサポートして、活性化させたいと思います。

 櫻田:コメント活性化のためにも、AI分析機能も活用していきたいと考えています。AIがリフレクションシートの内容を分析し、上長や育成担当者へコメントのヒントを提供することで、より効果的なフィードバックを促します。部署によっては、30人以上の新入社員を担当する上長もいます。AIの力で負担を軽減しながら、新入社員と良好な関係構築ができるように、仕組み化したいと思っています。

また、各新入社員のオンボーディングの状況を把握するため、独自でサーベイを実施しています。このサーベイで得られたデータとチームタクトのデータを組み合わせることで、個々の育成状況をより深く理解し、効果的な育成プランを策定できると考えています。

和田:コムウェアでは、現在、チームタクトは新入社員研修でのみ使用しています。ドコモとNTT Comを参考に、ほかの研修にも活用範囲を広げていきたいと考えています。

振り返りAI分析のイメージ

※リフレクションシート
リフレクションシートは、日々の経験学習サイクルを回し、リフレクション能力を高めるためのツールです。シートの内容は基本的には紙のときと同じですが、毎年少しずつ変えています。