<お話を伺った方>
NTTコミュニケーションズ株式会社 ヒューマンリソース部 末永千代さん
NTTコミュニケーションズ株式会社では、海外現地法人で経験を積む「海外トレイニー」プログラムを実施しています。トレイニーの育成を担当するヒューマンリソース部 末永さんは、世界の各拠点に点在するトレイニー同士の学び合いを推進したいと考えていました。2023年12月~2024年12月に派遣されたトレイニーで、チームタクトを使ったリフレクションを実施し、学び合いに有用性を発揮しています。リフレクション実施の経緯やその効果について、末永さんに伺いました。
概要
<課題>
- 派遣国が違うトレイニー間での情報共有状況が見えにくかった
- 他者のトレイニーレポート閲覧やその後のコミュニケーションが個人の自主性に任されていた
<活用成果>
- 他者の業務や振り返り内容を知ることができ、トレイニーが自身の業務に活かすことができた
- 自身の目標や行動を定期的にリフレクションシートで振り返りまとめているため、面談やトレイニーレポート提出の際にも役立った
<チームタクト活用のポイント>
- 非同期で課題への対応、学びや成長、海外生活イベントなどの情報を共有
- トレイニー同士のコメント記入の容易性
グローバルに通用するコミュニケーション力と専門スキルを習得するための海外派遣プログラム
―海外トレイニーの研修概要を教えてください。
海外トレイニーとは、グローバルな視点や経験に基づきビジネスを牽引する人材を育成するためのプログラムです。社会構造や技術動向の急激な変化により、市場やニーズが多様化、複雑化する中、コミュニケーションスキル、国際標準で通用する専門スキルを身に付け、将来のビジネスを担う人材育成が目的です。
NTTグループ会社のアジア、欧米など世界各国の拠点に、セールス、エンジニア、戦略スタッフなどを派遣しています。実際に海外の現場で業務経験を積むことで、専門スキルの向上を図れると考えています。
研修中に実現して欲しいこととして、①海外OJTを通じて、語学力や専門性スキルの向上はもちろん、多様性の高い環境下でその専門スキルを発揮してビジネス成果に結びつけるために必要な海外でのビジネスセンス、マインドを習得すること、②限られた研修期間を最大限活用するため、日本と異なる環境において決して受け身にならず「自ら積極的に学び、挑戦し、成長する姿勢」を維持し、各参加者が上記目的達成のために努力することを伝えています。
さまざまな国に派遣されたトレイニー同士の学び合いと情報共有の機会に
ーなぜ、海外トレイニーでリフレクション(振り返り)を行うことにしたのですか?
過去に派遣したトレイニーから、他社、また他地域に派遣されたトレイニーとの情報交換もより多くできれば良かったという声があったことが一つの理由です。
以前から、トレイニー同士の学び合いのために、四半期ごとのトレイニーレポートやトレイニー終了時の報告動画などを、トレイニー同士で見ることができる環境はつくっていました。しかし、能動的に共有されたものにアクセスするかどうかは個人に依存しており、実際に見ているかどうか、見た後のコメントはよくわからない状況でした。
また、国や派遣先によって派遣期間やタイミング、内容が異なり、個人毎のプログラムであるため、同じ年度に派遣された他トレイニーから学ぶ意識が高いとは言えない状態でした。
トレイニー同士が派遣期間中にオンラインで互いの状況を知り、学び合える環境を提供したいと考え、リフレクションとその共有を行うことにしたのです。
―具体的に、どのように行っているのですか?
自身のリフレクションを、チームタクトのリフレクションシートに記入し、グループで学び合います。
2023年度はトレイニーとして14名派遣されており、異なる地域のメンバーがグループになるよう7名ずつに分けて実施しました。
具体的には、毎月以下のような流れで行いました。
①毎月5日までにリフレクションシートに目標・課題を記入
②月末までに目標や課題に対してできたこととできなかったことの要因や得た学び、派遣先の状況や業務の感想を記入
③グループのほかのトレイニーのシート内容を読み、コメント欄に翌月5日までにコメント記入
④各グループリーダーが、グループ活動のまとめを翌月10日までに他グループに共有

グループメンバーへのコメントはなるべく全員にするよう依頼していますが、強制はしていません。受け身にならない自主性が重要です。また、リーダーはグループ内で順番に務めています。リーダーはグループメンバー全員のシートとコメント記入内容を読み、まとめコメントをトレイニーとHRが見るTeamsスレッドに投稿します。

非同期で学びを共有できる専門ツールとして、チームタクトを活用
―なぜチームタクトを活用しているのですか? またそれによるメリットはありますか?
以前から、四半期ごとにトレイニーレポートをもとに面談、Teamsでコミュニケーションを図ったり、専用ツールでヘルスチェックを行ったりと、トレイニーとHRはコミュニケーションをしています。しかし、昨年度のアンケートで「他のトレイニーの状況をより知りたかった」という声が挙がり、社員が自ら情報を取得し共有することを期待するだけではなく、より気軽に相互に共有できる仕組みをつくる必要があると考え、以前から社内研修で活用していたチームタクトを使うことにしました。
四半期ごとのレポートはTeamsで共有しており、他者のレポートを閲覧してもコメントまでは文章で伝えないことがあり得ます。チームタクトは、即時性がありながらも、書いたコメントが残り、簡単に他者のシートを振り返り見て、双方向で容易にコメントすることができます。「他者の様子が知りたい」というニーズに、チームタクトが最適だと思ったのです。
実際に使ってみて、課題にどのように対応しているか、自分自身の学びや成長、海外生活などの情報を共有する場となっています。
―完全に非同期型で行ったとのことですが、どのようなコミュニケーションがありましたか?
トレイニーがシートを積極的に閲覧し、やりとりができています。レポートやTeamsとは目的を差別化しており、トレイニー同士のコミュニケーション場として活用できています。
派遣期間、派遣先もばらばらの個人ごとのカスタマイズ海外研修において、オンラインならではの毎月のコミュニケーション機会となっています。そのような場ができたことは良い変化です。
他者のシートを見て情報を知る メンバーのがんばりが刺激に
―チームタクトの活用およびリフレクションの実施について、参加者からどのようなご意見がありましたか?
チームタクトを使うのは初めての社員が多かったですが、使い方に関する質問などはなく、それぞれ使いこなせていたようです。
派遣後に行う面談で感想を聞いたところ「シートを見るとほかのトレイニーの状況がわかる」など、ポジティブな意見が多くありました。
また、1年間の研修を終えた帰国後のアンケートでも、「横の情報共有ができるため有意義なツールだった」「ほかの人がどのような業務をしているのか、ほかの国でどのような生活を送っているのかを知ることができてよかった」「自分の目標や行動をシートにまとめているので、評価面談やリポート提出の際に役立った」「業務の立ち上がりや期中の頑張り具合を見られたことが非常に刺激になった」などの意見がありました。
有益な情報共有の場として活用してくれたようです。
―リフレクションにより、どのような効果が出ていますか?
面談の中で、他者や場所に関する発言が増えました。視野が広がっていることを感じます。また、自分の業務をするときに、他者のやり方を参考にして取り組んでいることもあるようです。まさに、学び合いが促進されたと言えるのではないでしょうか。
チームタクトの閲覧状況ログからも、刺激し合っている様子が見て取れました。

AIフィードバックで自身の改善点やタスクの優先順位を把握
―チームタクトが開発中のAIフィードバックも先行トライアルされたと伺っています。トライアルで感じられたことや期待がありましたらお聞かせください。
AIフィードバックを使ったトレイニーから、「タスクの優先順位についてアドバイスをもらって整理するようになった。その結果、抜け漏れなく日々のタスクをこなすことができた」「AI から得られる助言は自分で気づいていたものが多かったが、体系的に言語化してくれるので、自分の改善点としてチェック項目的な使い方ができた」などの感想がありました。
うまく活用し、改善に役立てていきたいです。
―今後、チームタクトを活用して取り組みたいこと、リフレクションに関する課題や目標はありますか?
来年度は派遣者数が倍以上になるので、グルーピングを工夫したいと考えています。具体的には1グループ4名程度の少人数グループにします。また派遣期間中グループメンバーの組み替えを予定しています。チームタクトはグルーピングしやすいです。うまくグループを組むことでコミュニケーションの活性化にもより効果があることと期待しています。
また、今年度のトレイニーの一部から、チームタクトとレポートに書く内容が似ているところがあるという声がありました。四半期の目標を毎月に落とし込めることがよかったという意見もあったので、レポートとの連動性は保ちつつ、よりトレイニー同士の学び合いを主目的としたグループ活動内容にしたいと思います。
複数の拠点の非同期コミュニケーションを図りたい組織におすすめ
―チームタクトによるリフレクションをどのような組織にお勧めしたいと思いますか?
まず、自身の行動を振り返る内省のきっかけと学び合いに関する仕組みづくりをしたい組織です。ある程度フォーマットが決まっていることで、自分の目標やそれに対する行動、結果を振り返りやすくなります。チームタクトを使うことで、簡単に始められるのではないでしょうか。
また、勤務拠点や期間が分かれていて、非同期でのコミュニケーションを図りたい組織にもおすすめです。一堂に会して打ち合わせするのが難しい環境にいる人同士でも、チームタクトであれば、成果や学びを共有することができます。集合せずに、オンラインで学び合いを促したい組織に最適だと思います。