<お話を伺った方>
アイレントホーム株式会社 専務取締役 三五博史 様
株式会社LIFULL HRソリューション事業部 國松圭佑 様
宅建モチベーティング ファシリテーター 小峯久実 様
不動産業界において、事業所ごとに「5人に1人以上」の設置義務がある、専任宅地建物取引士(宅建士)。合格率は1割前後と低く、業界全体の大きな課題となっています。この難題に対し、不動産情報サービス大手の株式会社LIFULLが、他社と連携し、国家試験を目指す社員の学習支援を開始しました。
初年度は、アイレントホーム株式会社とどのような取り組みをしたのか、サービス提供者と利用者の双方の視点からお話を伺いました。
概要
<課題>
- 多忙な業務との両立によりモチベーション維持が難しい。
- 通学支援や教材補助を行っていたが、会社側から社員の学習進捗や躓いているポイントが見えない。
<活用成果>
- 模試結果(点数)だけでなく過程(G-POPシートの試行錯誤)が可視化された。
- 隙間時間の徹底活用(移動中と机上学習の使い分け)など、自ら学習プロセスを管理する姿勢が定着した。
- 社内の足切りラインを対象者全員が突破。例年の通過者が1〜2名に留まる難関を、全員がクリアする実力を身につけた。
<チームタクト活用のポイント>
- 「G-POPマトリクス」によりフォロー対象者を明確化し、支援の個別最適化ができた。
- 客観的な指標(G-POPスコア)を参考にチーム編成を実施した。
- 非同期フィードバックと週1回の対話「ぐるり」のハイブリッド活用により、孤立化を防止できた。
一番の難題「モチベーションの維持」をどう支援するか
―社員の宅建資格取得にG-POPぐるりを取り入れた経緯や目的について教えてください。
三五:不動産企業の社員は、業務と並行して資格取得を目指すことになるため、長期的に一定の学習量を維持継続することが難しい状況にあります。これまでも通学支援や社内での教材購入補助などは行ってきましたが、会社側からは「本当に勉強しているのか」「何につまずいているのか」が見えず、手応えを感じられずにいました。新人研修を専門にする社外の支援サービスも活用しましたが、あまり手応えを感じられない状況でした。
社員のモチベーションの把握とサポートに課題感があるとLIFULL社に相談したことが、このプロジェクトの始まりです。
國松:三五さんからお聞きした課題は、まさに不動産業界全体の課題そのものでした。働きながら資格を取得するためには、「合格ラインに必要な学習量」と「正しい学習方法」を理解し、やり抜くことが不可欠です。
私は以前、中尾マネジメント研究所が主催するリーダー向けの私塾「中尾塾」でチームタクトとG-POPを経験し、「やるときめたこと」を着実にやり抜くことができました。この体験からもモチベーションを維持して、助け合いながら学習習慣を継続させるために、チームタクトを使ってG-POPぐるりをベースにした支援策をつくってみたいと思いました。
―チームタクトを支援策としてどのように活用しましたか。
國松:難関国家資格の通信教育を提供するフォーサイト社の5回の模擬試験に向けて、同社の教材で取り組む範囲をG-POPシートに記入していきました。参加者を3チームに分け、業務後に週1回G-POPぐるりを行いました。ファシリテーターには宅建士でありキャリアコンサルタントでもある小峯久実さんを迎え、学習進捗の確認だけでなく、メンタル面のサポートも手厚く行いました。
三五:私もチームタクトにログインして参加者のシートをオブザーブしました。加えて、月1回、運営側と当社振り返り会に参加しました。
小峯:ファシリテーターとして私が重視したのは、「個々の課題」と「モチベーションの維持」両面からのアプローチです。
チームタクト上で配布した「G-POPシート」に、毎日の学習計画と実績を入力してもらいます。私はそのシートに対し、週1回のG-POPぐるりの前に必ず一人ひとりへコメントを入れました。チームタクトは、参加者同士の取り組みが見え、伴走支援者からのコメントが毎週もらえる仕組みで、使いやすい印象です。
「G-POPスコア」と「AI分析」で、指導を個別最適化
―G-POPシート、G-POPレポート(AI分析)やG-POPマトリクスはいかがでしたか。
小峯:学習量が把握できるのがG-POPシートの魅力だと感じます。課題の提出や、テキストでのコミュニケーションがログとして残ることで、継続的にフォローアップできます。チームタクトではお互いのシートが閲覧できるので、メンバー間での良い刺激になっていました。
10月の試験日が近づく夏以降は、ギアチェンジが必要になります。模擬試験の点数を上げるためにどうすればいいのか、勉強の質や量が自律自転だけでは追いつかない部分について、「やるべきこと」の設定にアドバイザーとして積極的に介入することもありました。
三五:例年、8月初旬に社内試験を行い、そこで目標点数に届かないとその年の国家試験を受けられない仕組みにしてあります。従って、夏以降は、各自の主体性による自律自転プラスαの頑張りが必要になるのです。
國松:本業に影響を出さないためのペース配分には配慮が必要でした。業務を圧迫してしまうことがないように、G-POPシートの提出期限を調整しました。
小峯:前半はG-POPシートの提出が揃わないこともありましたが、後半はG-POPぐるりの前日までには全員書けるようになっていました。
G-POPぐるりでは、「Post(振り返り)」を重視して対話を持ちました。できたかできなかったかの結果よりも、なぜできなかったかをしっかり振り返ることが大切です。改善策を話すことで、次のアクションにつなげられていれば自ずと成長するからです。
國松:月1回の定例会では、小峯さん、三五さんと「G-POPマトリクス」を共有しました。
これは参加者を「タスク達成度」と「自律自転度合い(計画・振り返りの質)」の2軸で4象限に分類するものです。参加者を、「G-POPシートが書けていて社内試験での点数が高い人」「G-POPシートが書けているけど点数が低い人」「G-POPシートが書けていないけど点数が高い人」「そしてG-POPシートが書けていない上に点数も低い人」に分類することで、支援の仕方を個別最適化できました。
G-POPシートが書けていなくても、点数が高い場合は本人のやり方に委ねますが、G-POPも書けていない上に点数も取れていない人には手厚くフォローしていきました。
三五:このデータは、チーム編成の最適化にも役立ちました。当初は参加者のキャリアや性格を判断材料としながら、私の感覚でチームを決めていましたが、G-POPスコアの相関関係を見て、「この人とこの人を組み合わせれば相乗効果が生まれそうだ」と戦略的にメンバーを入れ替えることができました。
小峯:初めて関わる場合、一人ひとりの特徴を把握するのに2カ月ほど必要になります。今回活用したG-POPスコアは、私が参加者に対して感じている特徴が客観的に表れており、信頼性が高いと感じました。
三五:小峯さんは、3カ月目には私と同じくらいのレベルで参加者一人ひとりの特徴を把握してくれていました。私もG-POPスコアが参加者の特徴を表していると感じました。
学習の姿勢に変化 秘訣は自分の言葉に責任を持つこと
―半年間の取り組みの結果、参加者にはどのような変化が見られましたか?
小峯:G-POPぐるりを取り入れた当初は、目標に対して「できなかったこと」を私に謝る参加者もいましたが、「これは自分自身との約束だよ」と伝えました。この認識を変えてもらうことからのスタートでした。
G-POPのサイクルが回るにつれ、シートに書かれる言葉が「やらされ仕事」から「自らの意志」へと変わっていきました。
國松:以下は、初期と最後で記載内容の変化が顕著だった参加者の実際のシートです。
後半になると、「座ってやること」と「移動中にやること」に分けて隙間時間を徹底的に活用するようになりました。この行動変容こそがG-POPを継続する効果なのでしょう。


三五:当該社員は、過去に通学型で対策しながら複数回受験しましたが、一歩及ばず苦労していました。
今年はこのプロジェクトに参加し、特に夏以降、模試で安定して合格ライン(30点以上)を越えられるようになりました。宅建試験ではこの合格ラインである30点が大きな壁と言われており、この壁を越えだすと一挙に合格率が上がる傾向が見られます。問題の難易度に左右されることなく、着実に得点できるようになっていった印象です。
何より嬉しかったのは、点数が伸び悩んでいる時期でも、G-POPシートを通じて本人の試行錯誤や粘り強さが見えていたことです。模試の点数での一喜一憂ではなく、成長のプロセスを信じて応援できるようになりました。
その結果、今回のプロジェクトに参加した社員は全員が社内の足切りラインを突破しました。例年、独自学習での通過者は1、2名に留まるという非常に高い壁でしたが、全員がそれを乗り越えられたことは、この伴走支援の結果だと感じています。
働きながら難関資格の取得に挑む社員を、全力で支える企業体へ進化
―今後の展望を教えてください。
三五:「宅建資格を取得するのが当たり前」という企業文化を醸成したいです。勉強をやらされるからやるのではなく、自分との約束を守るために取り組む人材を育成したいと思っています。会社の意図に賛同して、積極的に宅建資格取得に乗り出す社員が増えてほしいのです。「この会社に就職して良かった」と言われる組織を目指して、これからも、現場からの意見を活かし、LIFULL社と共に考えていくつもりです。
國松:今回のプロジェクトで、不動産会社社員が、「働きながら難関資格を取得する」ための宅建資格の取得に向けた支援モデルを開発できたと思います。この支援モデルを多くの不動産会社様に活用してもらって、組織全体で宅建資格を取得する文化を創る人を増やしたいと考えています。ゆくゆくは、参加者自身がファシリテーターを担って、自組織の後輩の支援に取り組んでいくサイクルを生み出していきたいですね。
小峯:目標達成に向けて、妥当な質と量を遂行できる人材を育成していきたいと思っています。働きながら勉強するために、スケジュール管理力を高めたい人に薦めたいです。
人材育成と社員の定着率向上を両立させたい企業にも、活用してほしいと思います。まずは多くの企業にこの施策が有効な取り組みであることを知ってもらうことが目標です。
※1 G-POPぐるり
▼G-POPとは
「G-POP(ジーポップ)」とは、株式会社リクルートテクノロジーズの元代表取締役社長であり、株式会社中尾マネジメント研究所代表の中尾隆一郎氏が提唱している、高業績を挙げ続けられる人・組織の振り返りの型です。
「G-POP」とは、以下の4つの頭文字をとった造語です。
・Goal(ゴール・目的)
・Pre(事前準備)
・On(実行・カイゼン)
・Post(振り返り)
高業績を挙げ続けられる人・組織は、常にGoalを意識し、Pre(事前準備)に時間を使い、柔軟にOn(実行・修正)を行い、Post(振り返り)から成功・失敗のポイントを学び、仕事の成功確率を高めるとしています。
▼G-POPシートとは
G-POPの内容を記入するシートです。

▼グループリフレクション(ぐるり)とは
グループリフレクションとは、ファシリテーターの進行に沿い、個人が経験したことや気付いたことを共有し、グループで対話を通じて内省(リフレクション)を深める手法です。
発表者が行った振り返りの内容に対し、他の参加者が感じたことを伝えることで他者の視点に触れ、新たな気づきや学びを得ます。テキストや口頭で言語化することでお互いの業務や考えに対する理解を深め、関係性を構築・強化します。チームタクトではグループリフレクションを通じて、個人の内省力の向上と相互理解を深める場づくりを行う支援を行っています。
※2 G-POPレポート
個人のG-POPシートを数週間分束ねて、「解像度」「達成度」「振り返りの質」を評価し、改善のための具体的なアドバイスを提供する分析レポートです。
G-POPレポートには他者から学びをとりいれるためのヒントも書かれています。
※3 G-POPマトリクス
G-POPシートやG-POPレポートで出した定量評価をもとに、「タスク達成度」と「自律自転度合い」の2軸で、四象限に人材をプロットしたものです。個人ごとの支援優先度を可視化しています。
A(右上): タスク達成度が高く、自律的に行動できている人。
B(左上): 自律的な行動はできているが、タスクがこなせていない人。
C(右下): タスクはこなせるが、言語化が苦手な人。
D(左下): タスク達成度も自律自転度合いも低い人。

このように、支援の優先順位を明確にすることで、効率的なマネジメントを可能にしています。
































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