「メンバーにもっと主体的に動いてほしい」
多くのマネージャーが、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。会議では意見が出ない。依頼したことはやってくれるが、目的に照らして考えるところまでは進まない。結局、最後はリーダーが判断し、調整し、巻き取っている。
この状態を変える鍵のひとつが、フォロワーシップです。
フォロワーシップとは、単にリーダーの指示に従う姿勢ではありません。チームの目的を理解し、自分の頭で考え、必要な提案・支援・建設的な意見を通じて、チーム成果に貢献する働きかけです。
この記事では、フォロワーシップの意味、リーダーシップとの違い、発揮される行動、育て方を解説します。あわせて、個人の資質論で終わらせず、チームの仕組みとしてフォロワーシップを育てる方法も紹介します。
目次
フォロワーシップとは
フォロワーシップとは、チームや組織の目的を理解し、リーダーや周囲と協働しながら、主体的に成果へ貢献する力です。
「フォロワー」という言葉だけを見ると、リーダーについていく人、指示を受ける人、従う人という印象を持つかもしれません。しかし、組織行動の文脈でいうフォロワーシップは、受け身の態度とは異なります。
優れたフォロワーは、リーダーの方針をただ待つのではなく、目的を理解したうえで自分なりの仮説を持ちます。必要があれば支援し、違和感があれば建設的に伝え、チームにとってより良い行動を選びます。
つまり、フォロワーシップは「従う力」ではなく、「目的に向かって一緒に進む力」です。
ロバート・E・ケリー(Robert E. Kelley)は、Harvard Business Reviewの論考「In Praise of Followers」で、組織の成功をリーダーだけで説明する見方に疑問を投げかけ、フォロワーの質が組織成果に大きく関わると論じています。ケリー(Kelley)が重視したのは、自立的・批判的に考える力と、積極的に関与する姿勢です。これは、今日の職場で求められる「主体性」とかなり近い考え方です。
フォロワーシップとリーダーシップの違い
フォロワーシップとリーダーシップは、上下関係で優劣をつけるものではありません。役割の違いです。
リーダーシップが「どこへ向かうか」を示す力だとすれば、フォロワーシップは「その目的に向けて、自分はどう貢献するか」を考え、行動に移す力です。
たとえば、会議でリーダーが「今期は顧客継続率を上げたい」と話したとします。フォロワーシップが弱い状態では、「それで、私は何をすればいいですか?」で止まりがちです。
一方、フォロワーシップが発揮されている状態では、次のような反応が起こります。
- 「既存顧客からの問い合わせ内容を見ると、導入初月でつまずいているケースが多そうです」
- 「まずは直近3か月の解約理由を整理して、共通点を見てもよいですか」
- 「営業だけでなくCSも入れて、オンボーディングの改善案を出しませんか」
ここには、単なる前向きさではなく、目的理解、仮説、提案、協働があります。これがフォロワーシップの実務的な姿です。
なぜ今、フォロワーシップが重要なのか

フォロワーシップが重要になっている背景には、職場の変化があります。
以前よりも仕事は複雑になり、マネージャーがすべての情報を持ち、すべての判断を下すことが難しくなっています。リモートワークやハイブリッドワークが広がれば、リーダーはメンバーの状況を常に目で見て把握できるわけではありません。
この環境では、リーダーの指示を待つだけのチームは動きが遅くなります。現場で気づいたことを言語化し、必要な相談を早めに出し、周囲を巻き込みながら小さく改善するメンバーが増えるほど、チームは変化に強くなります。
また、フォロワーシップは心理的安全性とも関係します。エイミー・エドモンソン(Amy C. Edmondson)の研究では、心理的安全性がチームの学習行動に関わることが示されています。心理的安全性とは、何でも自由に言えるぬるい雰囲気ではなく、失敗や懸念、未完成の考えを出しても、対人関係上の過度なリスクを感じにくい状態です。
フォロワーシップが発揮されるには、「言っても大丈夫」「提案してもよい」「反対意見を出してもチームのためだと受け止められる」という土壌が必要です。逆に、心理的安全性がない職場では、メンバーは賢く黙ります。黙ることが自分を守る行動になってしまうからです。
だからこそ、フォロワーシップは個人の意識だけでなく、チームの関係性や振り返りの仕組みとセットで考える必要があります。
フォロワーシップを発揮する5つの行動
フォロワーシップは、抽象的な精神論ではありません。日々の行動に分解できます。
1. 目的を自分の言葉で理解する
フォロワーシップの出発点は、指示の背景にある目的を理解することです。
「何をやるか」だけを理解している状態では、状況が変わったときに判断できません。一方、「なぜそれをやるのか」まで理解していると、優先順位をつけたり、別の手段を提案したりできます。
実践するなら、依頼を受けたときに次のように確認します。
- 「今回の一番の目的は、〇〇の改善で合っていますか」
- 「期日までに完璧にするより、まず仮説を出すことが重要でしょうか」
- 「この仕事で一番避けたいリスクは何ですか」
目的を確認することは、受け身ではありません。成果に近づくための主体的な行動です。
2. 自分なりの仮説を持って提案する
フォロワーシップがある人は、相談するときに「どうしたらいいですか」だけで終わりません。未完成でも、自分なりの見立てを添えます。
たとえば、次のような形です。
- 「A案とB案がありますが、今の目的ならA案がよいと思っています。理由は〇〇です」
- 「まだ情報が足りませんが、現時点では〇〇がボトルネックに見えます」
- 「まず小さく試すなら、この範囲から始めるのがよさそうです」
仮説を出すと、リーダーは判断しやすくなります。周囲も議論に参加しやすくなります。フォロワーシップとは、リーダーを困らせないよう黙ることではなく、チームが考えやすくなる材料を出すことです。
3. 建設的に異議を伝える
フォロワーシップには、支援だけでなく異議も含まれます。
ただし、異議は相手を否定するためではなく、目的に近づくために出すものです。大切なのは、感情的な反発ではなく、事実・懸念・代替案をセットで伝えることです。
たとえば、次のように言い換えられます。
- 悪い例: 「それは無理だと思います」
- 良い例: 「今の進め方だと、A社対応と重なって品質が落ちる懸念があります。先に範囲を絞る案はどうでしょうか」
- 悪い例: 「現場をわかっていません」
- 良い例: 「現場では〇〇の手戻りが起きています。目的は賛成なので、運用だけ一度見直したいです」
リーダーにとって耳の痛いことも、チーム成果に必要なら伝える。それが成熟したフォロワーシップです。
4. 周囲の力を引き出す
フォロワーシップは、リーダーと自分の一対一の関係だけではありません。チーム内で周囲を支援し、学びを共有することも含まれます。
たとえば、次のような行動です。
- 新しく入ったメンバーが困っていそうなら、自分から声をかける
- 自分がうまくいった進め方を、再現できる形で共有する
- 会議で発言しにくそうな人に、事前に意見を聞いておく
- 自分の失敗やつまずきを、次の人の学びとして残す
チームの成果は、リーダーの能力だけで決まりません。メンバー同士が互いに学び合い、補い合える状態があるかどうかで変わります。
5. 結果から学び、次の行動を変える
フォロワーシップは、行動して終わりではありません。結果を振り返り、次の行動を変えるところまで含まれます。
タネンバウム(Tannenbaum)とセラソリ(Cerasoli)のメタ分析では、チームや個人のデブリーフ、つまり実行後の振り返りがパフォーマンス向上に関わることが示されています。仕事の経験は、ただ積み重ねるだけでは学びになりません。何が起きたのか、なぜそうなったのか、次は何を変えるのかを言語化して初めて、再現性のある学びになります。
フォロワーシップを育てるうえでも、振り返りは重要です。なぜなら、主体性は「もっと頑張る」だけでは続かないからです。行動の結果を振り返り、自分の判断や働きかけを少しずつ磨いていくことで、フォロワーシップは習慣になります。
フォロワーシップが発揮されない職場の原因
フォロワーシップが弱い職場では、メンバー個人を「指示待ち」「主体性がない」と見てしまいがちです。しかし、原因は個人だけにあるとは限りません。
目的が共有されていない
目的が曖昧なまま仕事が渡されると、メンバーは判断できません。何を優先すべきか、どこまで工夫してよいか、何を相談すべきかが見えないからです。
「言われたことはやるが、それ以上動かない」という状態は、本人のやる気不足ではなく、目的の共有不足から生まれることがあります。
提案しても受け止められない
過去に提案を流されたり、反対意見を強く否定されたりした経験があると、メンバーは次第に発言しなくなります。
「どうせ言っても変わらない」
「余計なことを言うと面倒になる」
「黙っていた方が安全」
この空気がある職場では、フォロワーシップは育ちません。
失敗を学びに変える場がない
主体的に動くほど、失敗やズレは起こります。大切なのは、それを責めるのではなく、学びに変えることです。
ところが、振り返りの場がない職場では、失敗は個人の中に閉じます。次に活かされず、周囲にも共有されません。結果として、メンバーは挑戦よりも無難な行動を選びやすくなります。
リーダーが巻き取りすぎている
リーダーが責任感から何でも巻き取ると、短期的には仕事が進みます。しかし、長期的にはメンバーが考える機会を失います。
「自分で考えてほしい」と願いながら、実際にはリーダーがすぐ答えを出してしまう。この矛盾があると、メンバーは考える前に確認するようになります。
フォロワーシップを育てるには、任せる側の設計も必要です。
G-POPの型に沿ってフォロワーシップを意識する5つのポイント
G-POPとは、成功・失敗のポイントを学び、仕事の成功確率を高める個人の振り返りの型です。Goal、Pre、On、Postの頭文字で、Goalを常に意識し、Pre(事前準備)に時間を使い、On(実行)しながら修正し、Post(振り返り)から学ぶ流れで進みます。
目的は仕事の成功確率を上げることで、フォロワーシップのために作られた型ではありません。ただ、各段階で考えたことを自分の中に留めず、チームに向けて出す。それだけでフォロワーシップの行動になります。
ステップ1:Goal(目標)をそろえる
まず、仕事の目的を言語化します。
「この仕事の完了条件は何か」
「誰にどんな価値を届けるのか」
「今回、最も大切にしたい判断基準は何か」
目的がそろうと、メンバーは自分で判断しやすくなります。フォロワーシップは、自由に動くことではありません。共有された目的に向けて、自律的に動くことです。
ステップ2:Pre(事前準備)で仮説を出す
次に、実行前の仮説を出します。
「うまくいくとしたら何が効きそうか」
「失敗するとしたらどこでつまずきそうか」
「事前に誰を巻き込むべきか」
この準備があると、メンバーは指示待ちではなく、見通しを持って動けるようになります。リーダーも、メンバーの考え方を早い段階で把握できます。
ステップ3:On(実行)で小さく相談する
実行中は、完璧な報告を待つより、小さな変化や違和感を共有します。
「想定より〇〇に時間がかかっています」
「A案で進めていますが、Bの懸念が出てきました」
「一度、範囲を絞って確認してもよいですか」
フォロワーシップが高い人は、最後に問題を持ち込むのではなく、途中でチームが修正できる情報を出します。
ステップ4:Post(振り返り)で学びを言語化する
実行後は、成果だけでなくプロセスを振り返ります。
「何がうまくいったのか」
「なぜうまくいったのか」
「次も再現するなら、どの行動を残すのか」
「次に変えるなら、どの準備を変えるのか」
この振り返りがあると、成功も失敗もチームの資産になります。
ステップ5:周囲からのフィードバックで盲点を知る
自分だけで振り返ると、どうしても見落としがあります。そこで、周囲からのコメントやフィードバックを受け取ることが重要です。
フォロワーシップは、自己完結する力ではありません。自分の行動が周囲にどう影響したのかを知り、次の行動に反映する力です。
周囲から見た良い行動、助かった行動、もう少し変えるとよい行動を知ることで、本人の学びは深まります。チーム全体にも「良いフォロワーシップとは何か」の共通言語が生まれます。

フォロワーシップを個人任せにしない仕組み
フォロワーシップは、個人の心がけだけで育てようとすると限界があります。
「もっと主体的に」
「自分で考えて」
「リーダー目線を持って」
こうした言葉は正しい一方で、具体的な行動に落ちていなければ、メンバーは何を変えればよいかわかりません。必要なのは、目的を確認し、仮説を立て、実行中に修正し、結果から学ぶ流れを、チームの習慣にすることです。
チームタクトの振り返りメソッドでは、個人の振り返りであるG-POPと、チームでの振り返りであるぐるりを通じて、経験を言語化し、周囲と共有し、次の行動につなげていきます。
公式メソッドページでは、G-POPはGoal、Pre、On、Postの流れで個人の経験から学ぶ型として紹介されています。また、ぐるりは本人の振り返りに対して他者がコメントし、対話を通じて気づきを深めるチームでの振り返りとして位置づけています。
フォロワーシップに置き換えると、これは次のような意味を持ちます。
- Goal: チームの目的を自分の言葉で理解する
- Pre: 目的に対して、自分なりの仮説と準備を持つ
- On: 実行中に状況を見て、必要な相談や支援を行う
- Post: 結果から学び、次の行動を変える
- ぐるり: 周囲から見た自分の貢献や盲点を知る
この流れがあると、「主体性を持とう」という抽象的な呼びかけが、日々の行動に変わります。
実際に、チームタクトの導入事例では、NTTドコモビジネス株式会社が新入社員育成でG-POPぐるりを活用し、セルフマネジメント力の向上と社員同士のつながり強化を目指した取り組みが紹介されています。リモートワーク下で同期や周囲とのつながりが希薄になりやすい状況に対し、内省と対話の場をつくることは、フォロワーシップを育てる土台にもなります。
フォロワーシップは、「優秀な人だけが自然にできること」ではありません。目的、仮説、実行、振り返り、対話の型をチームで持つことで、育てることができます。
フォロワーシップを高めるセルフチェック
最後に、自分やチームの状態を確認するための質問を置いておきます。
個人向けチェック
- 仕事を受けたとき、目的を自分の言葉で説明できるか
- 相談するとき、自分なりの仮説を添えているか
- 違和感があるとき、黙らず建設的に伝えているか
- 周囲が困っているとき、自分から支援しているか
- 成功や失敗を、次の行動に活かせる形で振り返っているか
リーダー向けチェック
- メンバーに「何をするか」だけでなく「なぜやるか」を伝えているか
- 提案や異議を、チームのための情報として受け止めているか
- メンバーが自分で考える余白を残しているか
- 失敗を責めるだけでなく、学びに変える場をつくっているか
- フォロワーシップを評価・承認する言葉を持っているか
ひとつでも弱い項目があれば、そこが改善の入り口です。フォロワーシップは、一度の研修で身につくものではありません。日々の仕事の中で、目的を確認し、仮説を出し、行動を振り返ることで少しずつ育ちます。
よくある質問
フォロワーシップとは簡単に言うと何ですか?
フォロワーシップとは、チームの目的を理解し、自分で考え、提案・支援・建設的な意見を通じて成果に貢献する力です。単にリーダーの指示に従うことではありません。
フォロワーシップと主体性は同じですか?
近い概念ですが、完全に同じではありません。主体性は「自分から動く姿勢」を指すことが多い言葉です。一方、フォロワーシップは、チームやリーダーとの関係の中で、目的達成に向けてどのように貢献するかまで含みます。
フォロワーシップとリーダーシップはどちらが重要ですか?
どちらも重要です。リーダーシップは方向性を示し、フォロワーシップはその目的に向けて現場から行動を生み出します。チーム成果は、リーダーだけでも、メンバーだけでも生まれにくいものです。
フォロワーシップが強い人の特徴は何ですか?
目的を理解し、自分なりの仮説を持ち、必要なときに提案や相談ができます。また、リーダーに従うだけでなく、チームのために建設的な異議を伝えられます。周囲を支援し、自分の行動を振り返って改善できる点も特徴です。
フォロワーシップを育てるには何から始めればよいですか?
まずは、仕事の目的を言語化することから始めるのがおすすめです。「何をするか」だけでなく「なぜやるか」をそろえると、メンバーは判断しやすくなります。そのうえで、実行前の仮説、実行中の相談、実行後の振り返りを習慣化していきます。
まとめ
フォロワーシップとは、リーダーをただ支える姿勢ではありません。チームの目的を理解し、自分の頭で考え、提案・支援・建設的な意見を通じて、成果に貢献する力です。
フォロワーシップが育つと、メンバーは指示を待つだけでなく、目的に向かって自律的に動けるようになります。リーダーもすべてを抱え込む必要がなくなり、チーム全体で考え、学び、改善する余地が生まれます。
大切なのは、フォロワーシップを個人の気合いや性格の問題にしないことです。
目的をそろえる。仮説を出す。実行中に相談する。結果を振り返る。周囲からのフィードバックで学ぶ。
この流れをチームの中に仕組みとして持つことで、フォロワーシップは再現性を持って育てられます。
参考・引用文献
- Robert E. Kelley, “In Praise of Followers,” Harvard Business Review, 1988-11-01. https://hbr.org/1988/11/in-praise-of-followers
- Mary Uhl-Bien, Ronald E. Riggio, Kevin B. Lowe, Melissa K. Carsten, “Followership theory: A review and research agenda,” The Leadership Quarterly, 2014. https://doi.org/10.1016/j.leaqua.2013.11.007
- Amy C. Edmondson, “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams,” Administrative Science Quarterly, 1999. https://doi.org/10.2307/2666999
- Scott I. Tannenbaum, Christopher P. Cerasoli, “Do Team and Individual Debriefs Enhance Performance? A Meta-Analysis,” Human Factors, 2013. https://doi.org/10.1177/0018720812448394
- Richard M. Ryan, Edward L. Deci, “Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being,” American Psychologist, 2000. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.1.68
- チームタクト「振り返りメソッド」 https://www.teamtakt.biz/method
- チームタクト導入事例「NTTドコモビジネス株式会社」 https://www.teamtakt.biz/case-study/ntt-communications-2


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