組織風土改革のための実践的アプローチと実例

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組織力強化・チームビルディング
エンゲージメント
心理的安全性

「うちの会社、なんだか雰囲気が停滞している気がする……」

「新しいことに挑戦しようと言っても、現場がシラけている」

経営層や人事担当者、そして現場のマネージャーの皆様から、このような悩みを伺うことが増えています。

戦略やシステムは立派なのに、なぜか組織が動かない。その原因の多くは、目に見えない組織風土にあります。

本記事では、捉えどころのない組織風土を構造的に分解し、今日から取り組める改革のアプローチと、実際に風土が変わった成功事例をご紹介します。

組織風土とは?

組織風土とは、組織全体やチーム内で共有されている価値観、認識、そしてメンバーの間で「当たり前」になっている暗黙の了解のことです。一言でいえば、「組織の性格」や「その場に流れる空気感」といえます。

組織風土は単なる職場の雰囲気ではありません。それは、明文化されたルール以上に、私たちの思考や行動を無意識レベルでコントロールするOSのような機能を果たしています。

例えば、失敗しても挑戦を称賛するOSが入っている組織では、メンバーはリスクを恐れず提案します。一方、失敗を減点するOSが入っている組織では、メンバーは沈黙し、無難な前例踏襲を選びます。どんなに優秀なアプリケーションを入れても、OSが古ければ、パフォーマンスは発揮されません。

組織開発の世界では、よく風土は「土壌」に例えられます。どれほど立派な種(優秀な人材)を植えて、高価な肥料(研修)を与えても、土壌(風土)が枯れていたり毒されていたりすれば、芽が出ることはありません。人材育成や組織変革を行う際、まずこの「土壌改良」から始めることが、遠回りのようで実は一番の近道なのです。

組織風土を構成する要素

組織風土は「掴みどころがない」と思われがちですが、組織開発の分野では、これを「ハード(構造)」と「ソフト(人間)」の2つの要素に分解して捉えるのが一般的です。

よく用いられるのが「氷山モデル」です。水面上に見えているハードな要素と、水面下に隠れている巨大なソフトな要素が、相互に影響し合って組織の実態を形作っています。

1. ハードの要素(水面上:仕組みと構造)

組織の骨格となる、目に見える形式的な要素です。マッキンゼーの7Sフレームワークにおける「戦略(Strategy)・組織構造(Structure)・システム(System)」などがこれに当たります。

  • 人事評価制度・報酬体系:何が評価され、給与に反映されるかのルール。
  • 組織図・指揮命令系統:誰が上司で、どのような役割分担か。
  • オフィス環境・ITツール:物理的な働きやすさの基盤。

これらは経営陣の意思決定によって、比較的短期間で書き換えることが可能です。しかし、ハードを変えるだけでは風土は変わりません。「新しい評価制度(ハード)を入れたのに、運用する現場の意識(ソフト)が変わらず形骸化した」という失敗は、ハード先行の改革でよく起こります。

2. ソフトの要素(水面下:意識と行動)

組織の血液や感情にあたる、目に見えにくい心理的・行動的な要素です。7Sフレームワークにおける「価値観(Shared Value)・スキル(Skill)・人材(Staff)・スタイル(Style)」などが含まれます。

  • 暗黙のルール・不文律:「会議では若手から発言してはいけない」「定時で帰ると気まずい」といった、明文化されていない掟。
  • 人間関係・コミュニケーション:挨拶の有無、雑談の多さ、部門間の壁。
  • 心理的安全性・感情:「失敗したら怒られる」「このチームなら本音を言っても大丈夫」といった、メンバーの内面的な感情や安心感

このソフトの領域こそが組織風土の本質です。ここには、メンバーの感情や納得感が含まれるため、社長命令で明日から変えることはできません。どんなに立派な戦略(ハード)があっても、それを実行するメンバーの心や関係性(ソフト)が冷え切っていれば、組織は機能しません。

重要なのは、この2つはセットだということです。例えば、「挑戦を称賛する」という風土(ソフト)を作りたいなら、口で言うだけでなく「挑戦した人を加点する評価制度(ハード)」が必要です。逆に制度(ハード)だけ作っても、運用する現場に失敗を許容する空気(ソフト)がなければ、誰も制度を使えません。

企業風土・組織文化・社風・カルチャーなどとの違い

「組織風土」と似た言葉に「組織文化」や「社風」があります。これらは混同されがちですが、変革を目指すなら以下のように区別して考えるとスムーズです。

用語 特徴・ニュアンス 変革の視点
組織文化 創業者の精神や長い歴史の中で培われたDNA。深層にある信念。 変えにくい。過去の蓄積であり、変革には5年〜10年単位の時間を要する。
組織風土 組織文化を背景としつつ、現在の環境、制度、メンバーの相互作用によって形成される「知覚された環境」。今の環境やマネジメントに対するメンバーの認識。肌で感じる「働きやすさ」や「職場の空気」。 変えられる。今の行動や仕組みを変えることで、比較的早期に変化させることが可能。
社風 組織全体から外部(顧客、取引先、採用候補者)に対して醸し出される独自の雰囲気や性格。外部から見た組織の雰囲気や印象。「明るい」「体育会系」など。 組織風土の結果として表出する「印象」に近い。定量化が困難。
カルチャー 近年、特にスタートアップやIT企業で使われる包括的な用語。「組織文化」と「組織風土」の両方を含むことが多い。「カルチャーフィット」などの文脈で使用される。 行動指針(バリューズ)として言語化され、採用基準や評価基準に強く結びついているケースが多い。

ここで重要なのは、組織文化(DNA)を変えるのは難しいが、組織風土(今の環境)はマネジメントによって変えられるという点です。日々の業務プロセスやコミュニケーションの型を変えることで今の風土を良くし、それが積み重なることで、やがて新しい文化へと育っていくのです。

良い組織風土がもたらす3つのメリット

良い組織風土への投資は、単なる「働きやすさ」アップだけではありません。経営に直結する3つのメリットがあります。

  1. 生産性・業績の向上
    「これを言ったら怒られるかな?」という余計な心配がなくなれば、報告・連絡・相談がスムーズになります。情報の隠蔽や部門間の対立といった見えないコストが下がり、意思決定が速くなります。
  2. エンゲージメントと定着率の向上
    自分を受け入れてくれる居場所がある感覚は、組織への愛着を高めます。特に、成長意欲の高い優秀な人材ほど風通しの良い場所を好むため、離職防止に直結します。
  3. イノベーションの創出
    心理的安全性が担保されていれば、メンバーは失敗を恐れずにアイデアを出せます。多様な意見がぶつかり合い、融合する土壌があって初めて、新しい価値(イノベーション)は生まれます。

【セルフチェック】あなたの会社の組織風土は?

自社の風土を改善するためには、まず現状を正しく知ることです。

チェックすべき5つの領域

組織サーベイなどを実施する際は、以下の5つの観点で「現場の本音」を探ってみてください。

  1. 仕事内容:やらされ仕事になっていないか?仕事に意義を感じているか?
  2. ビジョンへの共感:会社の未来に期待しているか?経営陣を信頼しているか?
  3. 人間関係:職場の心理的安全性はあるか?困った時に相談できる空気があるか?
  4. 風土・方針:挑戦が称賛されるか?失敗が許容されるか?
  5. 人事施策:評価に納得感があるか?頑張りが報われているか?

【タイプ診断】安定的・統制型vs変革的・自律型

また、自社の「戦略」と「今の風土」が合っているかも重要です。以下の表で、御社はAとB、どちらに近いでしょうか?

診断項目 A:安定的・統制型風土(Traditional) B:変革的・自律型風土(Agile)
意思決定 石橋を叩いて渡る(失敗回避) 走りながら考える(スピード重視)
評価基準 プロセス・協調性重視 結果・成果重視(信賞必罰)
人間関係 空気を読む(波風を立てない) 健全な衝突を歓迎(意見を言う)
業務姿勢 指示待ち・マニュアル遵守 自律的・課題発見型
失敗への態度 責任追及(誰がやったか) 原因究明(なぜ起きたか)

もし、経営戦略として「イノベーション(B)」を目指しているのに、現場の風土が「減点主義(A)」のままであれば、そのギャップこそが組織が停滞している原因です。

自律型風土に変える仕組み・フレームワーク

では、どうすれば古い風土を変え、自律的な風土を作れるのでしょうか。精神論やスローガンだけでは、組織の空気は変わりません。おすすめなのは、日々の業務の中で少しずつ、例えば仕事の型といった誰もが実践できることから変えていく方法です。ここでは2つご紹介します。

1.G-POP

G-POPは単なるPDCAの亜種ではありません。常にゴールを意識し、事前準備に最大のエネルギーを割くことで、急激な変化にも対応できる「自律型人材」の思考プロセスそのものです。

  • G(Goal):「常に目的を意識し続ける」ことです。「これ、何のためにやってるんだっけ?」と迷子にならないよう、常に北極星(ゴール)を確認します。
  • P(Pre):ここが最重要です。いきなり走り出すのではなく、仕事を「自分が持てる大きさの荷物(サイズ)」に分解します。「1カ月でこれをやれ」と言われると重くて持てませんが、「今週はここまでやればOK」と小分けにすれば、誰でも確実に前に進めます。この「段取り」こそが、自律的に動くための鍵です。
  • O(On):小さくした荷物を、確実に運びます(実行)。もし予定外のことが起きても、ゴールを見失っていなければ、その場で柔軟に修正できます。
  • P(Post):結果が出てから反省会をするのではありません。「Pre(準備)で決めたサイズ感は適切だったか?」「次はどうすればもっと楽に運べるか?」と、「成功の再現性を高める点」と「失敗の再発を防止する点」を振り返ります。犯人探しではなく、仕組みの改善に目を向けます。これを繰り返すことで、仕事の勘所(ナレッジ)が身につきます。

2.グループリフレクション(ぐるり)

「風通しを良くしよう」と言って飲み会を開いても、結局仲の良い人同士で固まったり、上司の独演会になったりしがちです。ぐるりは、業務時間内に、強制的に「フラットな対話」を生み出す仕組みです。Googleのプロジェクト・アリストテレスで証明された、心理的安全性を生むのに必要なポイントを押さえて設計されています。

  • 話す時間を平等にする:グループ内での発現量が同じであることがポイントです。時間で区切って、全員同じ量ずつ発言するルールを敷きます。
  • 「感謝」から入るチェックイン:いきなりG-POPに入るのではなく、24時間以内にあった感謝やGood&Newを共有し、場をポジティブにします。
  • 1週間のG-POPを共有:4〜5人のグループで、今週の「G-POP(何を目指し、どう段取りし、どうだったか)」を共有します。
  • アドバイスではなく「感想」を:聞き手は批判や指導をするのではなく、「感じたこと」をフィードバックします。これにより、誰が何を言っても安全な場(心理的安全性)が担保され、相互の学び合いが加速します。

G-POP・ぐるりで組織風土改革・醸成が成功する3つのポイント

この2つを日常業務に組み込むことで、組織はどう変わるのか?具体的な3つのポイントを見ていきましょう。

1.犯人探しの風土を学習する風土に変える

  • Before:失敗すると「誰がやったんだ?」という責任追及(犯人探し)が始まります。するとメンバーは失敗を隠すようになり、同じミスが繰り返されます。
  • Method(G-POP):仕事の振り返りの型を「G-POP」に変えます。
  • After:振り返りの視点が「人(Who)」ではなく、「Pre(事前準備)のどこが足りなかったか?」「On(実行)の仕組みをどう変えるか?」に向きます。振り返りが「お説教の場」から、「再現性の向上」と「再発防止」のための作戦会議に変わり、失敗がチームの貴重なナレッジになります。「失敗を責める風土」から「学習する風土」への転換です。

2.関係の質から変え、心理的安全性を醸成する

  • Before:表面的には揉めていないけれど、会議では誰も本音を言わない。「余計なことを言って波風を立てたくない」という心理が働き、悪い情報ほど隠されます。
  • Method(G-POPぐるり):Googleのプロジェクト・アリストテレスでも証明された「発言の均等性」や「共感」を仕組み化した「ぐるり」を行います。業務時間内に、チーム全員が平等に話し、感謝を伝え合う場を強制的・定期的に設けます。
  • After:MITのダニエル・キム教授の「成功循環モデル」にある通り、結果を出すにはまず「関係の質」を高める必要があります。心理学者のカール・ロジャースが説いたように、人は受容されることで自己一致し、本来の力を発揮します。Good & Newや感謝を伝え合うことをルールとして行うことで、自然と心理的安全性が高まります。精神論で仲良くするのではなく、「型」を守ることで関係性が良くなり、耳の痛いことも言い合える信頼関係が生まれます。

3.自分たちで決める機会を増やし自律自転する風土へ

  • Before:「もっと自分で考えろ」とマネージャーは言いますが、失敗すると怒るため、メンバーは次第に「指示待ち」になります。
  • Method(G-POP):心理学者のカール・ロジャースは「人は自分でやることを決める時に幸せを感じる」と言いました。小さな業務でも「Goal(目的)」を確認し、「Pre(段取り)」を自分で考える習慣(G-POP)をつけます。
  • After:マネージャーが全て指示するのではなく、「今週のGoalとPreはどうする?」と問いかけます。メンバーが、自分で決めた段取りで動く機会を作ることで、やらされ仕事が「自分のプロジェクト」に変わり、当事者意識が芽生えます。これが自律自転する風土の醸成につながります。

漠然とした頑張りが成果につながる行動へ。振り返りの習慣化で組織風土が変わった事例

ここで、スポーツチームにおける風土変革の事例をご紹介します。これはスポーツの話ですが、ビジネス組織にも通じる普遍的なヒントが詰まっています。

事例:プロバスケットボールチーム育成組織「アースフレンズ東京Z U15」

  • Before(課題):
    選手たちは「プロになりたい」という大きな目標を持っていましたが、日々の練習は漠然とした頑張りになりがちでした。コーチも、コート上での選手の姿しか見えず、選手が内面に抱えている悩みや思考プロセスまで把握できていませんでした。
  • Action(施策):
    G-POPの実践:
    チームタクトを導入し、週末に次週の目標(Pre)と振り返り(Post)を言語化・可視化しました。
    フィードバックと相互閲覧:コーチが個別にフィードバックを行うだけでなく、チームメイト同士でお互いの振り返りを可視化し、関係の質を高めました。
  • After(成果=風土の変革):
    認識ズレの解消:
    「自分がしたいプレー」と「コーチが求めているプレー」のズレが、言葉にすることで解消され、選手は迷いなく練習に取り組めるようになりました。
    自律性の獲得:「コーチに言われたからやる」のではなく、「自分で決めた目標だからやる」というマインドに変化。漠然とした目標ではなく、具体的な行動目標を自分で立てて実行する自律的な風土が生まれました。
    チームワークの強化:お互いの課題や目標を知ることで、練習中に「今の良かったね!」「次はこうしよう」と自然に声を掛け合うようになりました。

この事例が教えてくれるのは、まだ経験の浅いメンバーであっても、思考を可視化し、マネージャー(コーチ)との認識のズレを合わせる「仕組み」があれば、自律的に動き出し、チームの連携も強まるということです。

まとめ:良い風土は日々の仕事の進め方の中に宿る

組織風土改革というと、大掛かりなイベントや意識改革キャンペーンを想像しがちです。しかし特にソフトの変更は難しく、「意識を変えよう」と説得しても人の心はそう簡単には動きません。

では、どうすれば良いのか。心理学や行動科学の知見に基づけば、答えは逆になります。「意識が変わってから行動が変わる」のではなく、「行動を変えることで、後から意識が変わる」のです。

「とりあえずやってみたら、意外とうまくいった」

こうした「新しい行動」と「小さな成功体験」の積み重ねで、組織のOSを書き換えていくことができます。

まずは明日から、日々の仕事の進め方や、マネジメントのやり方を少しだけ変えてみませんか?

チームタクトは、G-POPぐるりを通じた自律的な組織風土の醸成をサポートしています。「今の組織の空気をなんとかしたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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