組織課題の見つけ方と解決策|中尾式4ステップでの分析実践例付き

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組織力強化・チームビルディング
エンゲージメント
離職防止

「組織の雰囲気がなんとなく悪い」
「離職率が下がらない」
「新しい施策を打っても、いつも掛け声だけで終わってしまう」

多くの企業が抱えるこうした悩み。
目の前のトラブルに対処しても、また別の場所で似たような問題が起きる――。
それは、表面的な現象の裏にある「組織課題」の真因(根本原因)にたどり着けていないからかもしれません。

本記事では、曖昧になりがちな組織課題を定義し、その見つけ方から解決までの具体的なステップを解説します。株式会社中尾マネジメント研究所の中尾隆一郎氏が提唱する問題解決の4ステップや、AIを活用した最新の分析手法も交え、自律的に成長し続ける強い組織を作るためのヒントをお届けします。

組織課題とは?意味と重要性

組織課題とは、企業やチームが掲げる理想の状態(Goal/Vision)と、現在の実態との間に存在するギャップのうち、個人の努力のみでは解決し得ない、組織構造、システム、あるいは文化に起因する複合的な問題を指します。

例えば、あるメンバーのミスが頻発している場合、それが単なる不注意であれば個人の課題です。しかし、そのミスを誘発するマニュアルの不備や、チェック体制の欠如、あるいはミスを報告しにくい職場雰囲気があるならば、それは明白な組織課題となります。「誰が悪いか」ではなく「仕組みのどこが詰まっているか」を問うことが出発点です。

今、組織課題に取り組むべき理由

なぜ今、あらためて組織課題の解決が重要視されているのでしょうか。主な理由は以下の通りです。

  1. 事業継続性と競争優位性の確保
    変化の激しい時代、組織内部に機能不全を抱えたままでは競争力を失うため
  2. 人材定着とエンゲージメント向上
    労働人口減少の中、働きにくい環境を放置すれば優秀な人材から離職するため
  3. 生産性の向上
    部門間の連携不足や属人化を解消し、利益率を改善するため

組織の状態を正しく把握し、改善し続けることは、単なるトラブルシューティングではなく、企業の生存戦略そのものなのです。

組織課題の種類とよくある事例

「組織課題」と一口に言っても、その現れ方はさまざまです。自社の状況に近いものがないか、以下のカテゴリーで確認してみましょう。

1.組織構造・風土の課題

  • 縦割り組織の弊害:「隣の部署が何をしているか分からない」状態により、連携不足や二重業務が発生する。
  • 心理的安全性の欠如:上司に意見がいえない、悪い報告が上がらない、ミスを隠蔽する風土。イノベーションが生まれにくくなります。
  • 理念(MVV)の形骸化:立派な理念があっても、日々の意思決定や行動指針として機能していない状態。

2.人材・育成の課題

  • 次世代リーダーの不在:プレイングマネージャー化が進み、部下育成がおろそかになった結果、管理職の後任が育っていない。
  • 若手の早期離職:成長実感が得られない、キャリアへの不安があるなどの理由で、入社数年で退職してしまう。
  • 自律性の欠如:言われたことしかやらない指示待ちの姿勢が蔓延している。

3.業務・生産性の課題

  • 属人化:「あの人がいないと業務が回らない」状態が放置され、休職や退職時のリスクが高い。
  • DXの遅れ:アナログな業務プロセスが残っており、データの活用や効率化が進んでいない。

4.評価・処遇の課題

  • 評価基準の不透明さ:評価が上司の主観や好き嫌いで決まっていると感じられ、納得感が低い。
  • 戦略と評価の不整合:挑戦しろと言いながら減点主義で評価する、チームワークを推奨しているのに個人成果しか評価されないなど、メッセージと制度が矛盾している。

なぜ、組織の課題解決は失敗ばかりするのか?

多くの企業が課題解決に取り組んでいますが、うまくいかないケースも少なくありません。よくある失敗パターンは、目に見える現象だけを叩くモグラ叩きの繰り返しです。

失敗の本質は、目に見えない「関係性や価値観のズレ(ソフト面)」が原因であるにもかかわらず、安易な「やり方やツールの変更(ハード面)」だけで解決しようとする点にあります。例えば、「チーム内の会話がない」という悩みに対し、その背景にある人間関係の悪化や心理的安全性の欠如といった真因を無視して、チャットツールを導入しても会話は生まれません。むしろ、「余計な仕事が増えた」と現場の反発を招くことさえあります。

重要なのは、水面下にある真因を見に行く視点です。「なぜ、そうなったのか?(個人の行動)」ではなく、「何が、そうさせたのか?(環境要因)」という問い直しを行うことが、解決への第一歩です。

組織課題の見つけ方:顕在課題と潜在課題

課題にはすでに見えているものと隠れているものの2種類があります。

種類 顕在課題 潜在課題
定義 すでに数値や実害として表面化している「悪い結果」 まだ表面化していないが、結果を引き起こしている「構造的な要因・リスク」
具体例 離職率の急増、赤字、ミスの多発、残業時間の超過 モチベーションの静かな低下、人間関係の軋轢、なんとなく重い空気、スキルの陳腐化、「言われたことしかやらない」空気
見つけ方 財務データ、業務日報、退職者データなどの数値・事実から把握可能。 数値には表れにくい感情や関係性に潜む。従業員サーベイや1on1での対話が必要。
対策 緊急性が高いが、ここだけ叩いても対症療法になりがち。 顕在課題を引き起こしている真因であることが多い。予防的・根本的な構造改革が必要。

特に重要なのは潜在課題の発見です。 これは表面上、別の事象(例:残業が多い)としてカモフラージュされていることが多く、その背後にある「マネジメント不全」や「失敗を許容しない風土」といった真因を見逃さないことが、本質的な解決の鍵となります。

組織課題を解決するためのステップ

課題を特定できたら、どのように解決すれば良いのでしょうか。ここでは、中尾隆一郎氏の著書『世界一シンプルな問題解決』1で紹介されている4つのステップをご紹介します。

中尾氏は、優秀な経営者が無意識に行っている問題解決のプロセスを以下の4段階に体系化しています。

  1. 現状把握:分解して「本当の課題」を特定する
  2. 解釈:Whyを繰り返し、解決策(真因)を見つける
  3. 介入:現場に行動してもらう(おせっかいを焼く)
  4. 感情の保留:好き嫌いや怒りを横に置き、事実ベースで判断する(全工程の土台)

また多くの人が陥る罠として、目の前の問題を片っ端から解決しようとしてしまいます。中尾氏はまず言葉の定義を分け、「問題の課題化」を行うべきだと説きます。

  • 問題:現在起きているよくないことやもやもや
     →必ずしもすべて解決する必要はない(放置していい場合もある)
  • 課題:将来到達したいゴール(あるべき姿)と現状とのギャップ
     →未来に影響があるため、解決すべきもの

問題の中から将来のゴールに影響するかどうかを見極め、本当に取り組むべき課題を切り出すこと。これがスタートラインです。

組織課題の分析・解決に役立つフレームワーク5選

ここでは、書籍の中で取り上げられていたフレームワークを5つご紹介します。

  1. プロセス分解
    業務を時間軸・工程で分ける手法です(例:営業プロセス=アポイント→商談→見積もり→受注)。どこで詰まっているか、ボトルネックを探す基本技です。
  2. マトリックス分解
    重要度×緊急度」や「スキル×意欲」のように、2つの軸で事象を4象限に分ける手法です。優先順位をつけたり、全体像を整理するのに役立ちます。
  3. 因数分解
    計算式で分ける手法です(例:売上=客数×単価)。構成要素を漏れなく洗い出し、どの数字にインパクトがあるかを探ります。
  4. ECRS(イクルス)
    業務改善の4原則です。具体的な解決策を考える際に使います。
    • Eliminate(排除):なくせないか?
    • Combine(結合):一緒にできないか?
    • Rearrange(交換):順序を変えられないか?
    • Simplify(簡素化):単純にできないか?
  5. クロスSWOT分析
    「強み・弱み」×「機会・脅威」を掛け合わせ、具体的な戦略オプションを導き出す手法です。現状把握から戦略立案につなげる際に役立ちます。

【やってみた】AI×中尾式4ステップで、組織課題解決プロセスを実践

「理論は分かったが、具体的にどう動けばいい?」という方に向けて、ここからは、架空の事例(指示待ち部下の改善)をもとに、生成AIも活用しながら4ステップを実践してみます。

Step0 まずは「問題」を「課題化」する

まずは散らばっている問題を整理します。日報や議事録をAIに読み込ませ、事実と感情を整理させると効率的です。

  • AIへの指示例:「日報データを分析し、業務プロセスの遅延(事実)と、本人の愚痴(感情)を分けてリスト化して」

※社外のAI(ChatGPTなど)を使う場合、顧客名や個人名は「A社」「Bさん」などに置換してから入力するよう、セキュリティにはご注意ください。

AIが出した問題のすべてを解決する必要はありません。「自分たちのありたい姿」に照らし、放置できない数個だけを人間の意志で選び取り、課題と認定します。「やらないことを決める」のが最初のステップです。

Step1 課題を分解する・現状把握

さて、ここではStep0で「部下が指示待ちだ」という問題を課題に選んだとします。続いてはStep1。プロセス分解やマトリクスを使って課題を分解していきます。

ここでもAIを使って効率化できます。例えばAIに「営業の標準的な業務フローを出して」と指示し、それを自社用に修正すればゼロから作る手間が省けます。さらに、チャット履歴などを読み込ませ「どの工程で質問や停滞が多いか」を分析させれば、ボトルネックの当たりを付けることができます。ただし、AIは現場を知りません。最後は必ず自分の目で「三現主義(現場・現物・現実)」に基づき事実確認を行いましょう。

Step2 センターピンを特定して深堀りする

Step1で当たりを付けたボトルネック箇所を中心に現場・現物・現実を確認した結果、「提案書作成」と「報告書作成」の工程で部下の手が止まり、「上司からどう書けばいいか指示されるのを待ってしまっている」ことが分かりました。さらにその工程を細かく観察すると、指示待ちを引き起こしている具体的な要因(課題)として、以下の5つが見えてきたとします。

  1. 提案に必要なヒアリング項目が抜け落ちている(情報が足りないため、手が止まっている)
  2. ゼロから構成案を作る方法を知らない(どう書き始めていいか分からず、指示を待っている)
  3. 共有フォルダが乱雑である(参考になる過去の資料を自力で探せず、諦めている)
  4. 日報などの入力項目が多すぎる(事務作業に追われ、提案を考える思考の余裕がない)
  5. 会議がぎっしり詰まっている(物理的にまとまった作業時間がとれない)

ここで「センターピン(急所)」を定めます。今回は2をセンターピンにします。一見1の方が解決できた時のインパクトが大きそうですが、例えば「構成案(テンプレート)」という型を作って渡せば、「この項目を埋めるためには、これをお客さんに聞かなきゃいけないんだな」と逆算でわかり、結果的に1も解決すると思いませんか?これが「1つを解決するとほかも解決しそうなもの(センターピン)」の選び方です。

さて、センターピンが決まったら「なぜ?」を繰り返して深掘りします。

「研修はした」→「でも抽象的だった」→「実務で使える型がない」

ここで多くの人は「部下の意識が低い」と精神論にしがちですが、中尾氏は「物理的に手を打てるスイッチ(仕掛け)」を探せと言います。つまり、「やる気がない(意識)」のではなく、「難易度が高すぎて手が動かない(環境)」のが真因だと捉えるのです。

ここで「もっとやる気を出せ」と個人の内面に迫るのは悪手です。必要なのは、誰でも自然と手が動くように環境側を変えること。具体的には、「穴埋めシートを作ってハードルを下げる」という解決策を導き出します。これは単なるツールの作成ではなく、業務の難易度という環境を調整するアプローチです。

Step3 ハードとソフトはセットで行う

組織開発の失敗例としてよく、変更が容易なハードだけを改善し、人の意識であるソフトを置き去りにすることが挙げられます。今回も同じで、単にシート(ハード)を渡して「後はよろしく」では、現場は動きません。「どう使うか分からない」「失敗が怖い」という心理的ハードル(ソフト)が残っているからです。

  1. あなたたちは「できる」「すでにやっている」と伝える:「以前君が作ったあの提案書、すごく良かった。あのクオリティーを毎回出せるように型を作ったんだ」と渡す。
  2. 心理的ハードルを下げる:「完璧じゃなくていい。金曜に15分だけ時間を取るから、試しに埋めてみて感想を教えて」と依頼する。

ハード(シート)で業務の難易度を下げ、ソフト(対話と心理的安全性)で着手を促す。この「ハードとソフトのセット」こそが、組織課題を解決する鉄則です。

またこうして行動のハードルを極限まで下げ、小さな「できた」を作ることもポイントです。行動すれば結果が出やすくなり、周囲の評価も上がり、最終的に「自分から工夫してみよう」という自律性(ソフト)が育ちます。

Step4 無意識の判断(感情)を保留する

もし金曜日に部下が白紙のシートを持ってきたら?瞬間的にイラッとするかもしれません。しかし、怒りが湧くのは「白紙だった(事実)」ことに対してではありません。脳が勝手に「サボったな」「私を軽んじている」という悪い解釈(判断)を付け加えたから怒りが湧くのです。もし理由が「事故に遭ったから」なら、怒りではなく心配が湧くはずです。

ここで感情の保留を行います。これは怒りを我慢することではありません。「あ、今自分は『こいつはサボったな』と決めつけたな」と気づき、その勝手な判断(解釈)をいったん脇に置いておくことです。判断を保留すれば、「なぜできなかったのか?」とフラットに事実だけを確認できます。

組織課題を大ごとにしないために。早期発見と対話の習慣化を

トップダウンで「やり方を変えろ」と指示しても、現場は定着しません。解決策をやり続け、成果を出すには、現場の一人ひとりが自ら考え動く自律自転の状態が必要です。そのために有効なOSが、中尾氏の提唱する「G-POP」です。

  • Goal(ゴール):常に目的・目標を意識する。
  • Pre(事前準備):実行のための段取りをする。
  • On(実行):計画を実行する。
  • Post(振り返り):ここが最も重要です。成功の再現性を高め、失敗の再発防止をするために振り返ります。

組織課題が深刻化するのは、問題が深刻化してから対応するからです。G-POPを回し、日々の振り返りの中で、悪い兆し(違和感やヒヤリハット)を共有する文化を作れば、問題が大きくなる前に解決に動けます。

「なんとなくお客様の反応が悪かった」「この手順、ミスしそうだと感じた」

こうした小さな悪い兆しの段階なら、マネージャーはすぐにサポートでき、大事に至らずに解決できます。ハインリッヒの法則にあるように、大きな事故の裏には数多くのヒヤリハットがあります。これらを日常的に共有し、学び合う組織こそが、変化に強い組織なのです。

まとめ:悪い兆しを共有できる文化づくり

組織課題解決のカギは、事実に基づく正しい分解(現状把握)、現場への適切な介入にあります。しかし、本質的な解決には、メンバー一人ひとりが当事者意識を持つ自律型組織への変革が必要です。小さな悪い兆しをチームで共有し、ボヤのうちに消し止める文化があれば、組織は健全に成長し続けることができます。

チームタクトは、こうした「リフレクション(振り返り)」を日常業務に組み込み、チーム全員で実践・共有し、互いに学び合うための仕組みを提供しています。AIによるフィードバックや分析機能が、忙しいマネージャーの介入をサポートし、組織の自律的な成長を支援します。

組織の悪い兆しを早期発見し、自律的に解決できる強いチームを作りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。

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参考・引用文献

  1. 中尾隆一郎. 『世界一シンプルな問題解決』. フォレスト出版, 2022.

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