組織開発とは?人材開発との違いから、自社で実践する「7つのステップ」まで徹底解説

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組織力強化・チームビルディング
自律
離職防止

現代のビジネス環境は、予測不能なVUCAがさらに加速したBANI(脆さ、不安、非線形、不可解)の時代へと突入しています。

大企業でさえ、想定外の変化で一瞬にして崩れ去る脆さを孕む現代。「一人ひとりが自律的に考え、動けなければ組織は生き残れない」という危機感の中、組織のパフォーマンスを最大化する「組織開発(Organization Development:以下OD)」が注目されています。

しかし、組織開発という言葉を聞いても、「人材開発(Human Resource Development:以下HRD)と何が違うのか?」「具体的に何をすればいいのか?」と疑問に思う人事担当者やマネージャーの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、組織開発の目的や手法、そして人事やマネージャーが自分たちで組織開発を実践するための7つのステップなどを網羅的に解説します。

組織開発(OD)とは?目的と定義

組織開発の定義は多岐にわたりますが、リチャード・ベックハードの定義(1969)が有名です。

「組織開発とは、計画的であり、組織全体にわたり、トップマネジメントによって管理され、組織の効果性と健全性を高めるための、行動科学の知識を用いた組織のプロセスへの計画的な介入である。」

少し難しく聞こえるかもしれませんが、シンプルにいえば「組織を『システム』として捉え、その中の人間関係や相互作用を良くすることで、組織が自ら問題を解決できる力(自己変革力)を付けること」が目的です。

組織開発では、以下の2つの側面を向上させることを目指します。

  • 効果性:目標を達成する力(業績、生産性、イノベーションなど)。
  • 健全性:人間関係の質や適応能力(信頼関係、心理的安全性、モチベーションなど)。

業務フローの修正といった対症療法ではなく、組織の空気や関係性というソフト面に働きかけるのが特徴です。

人材開発(HRD)との違い

よく混同される「人材開発(HRD)」とは、アプローチの対象が異なります。

比較項目 人材開発(HRD) 組織開発(OD)
対象(ターゲット) 個人(人) 関係性(間)・組織システム
焦点 個人の知識・スキルの向上 相互作用・風土の改善
アプローチの考え方 個人の能力が上がれば組織も良くなる 関係性が悪ければ個の能力は生きない

例えば、「チームの業績が上がらない」という課題があったとします。

人材開発の視点では「メンバーのスキル不足」と考え、スキル研修を行います。一方、組織開発の視点では「マネージャーとメンバーの信頼関係の欠如」や「協力しにくい雰囲気」を疑い、対話の場を設けて関係性の修復を図ります。

このように、組織開発は個人のスキルアップだけでは解決できない複雑な組織的課題に対し、プロセスへの介入を通じて解決を図るものです。しかし現代の複雑な組織課題を解決するには、個人のスキルアップ(人材開発)と、そのスキルを発揮できる環境づくり(組織開発)の両方を、車の両輪として統合的に進める必要があります。

なぜ今、組織開発が注目されるのか

1. 人間ならではへのシフト

定型業務がAIや機械に代替される中で、人間には0から1を生み出す創造性や複雑な利害調整、意味の創出といった、AIには代替できない高度な役割が求められるようになっています。こうした役割を果たすためには、上意下達の管理型マネジメントではなく、多様なメンバーが自由に意見を出し合い、協働できる土壌(OS)が必要です。

2. 人的資本の重要性とリテンション

中原氏は「ヒトはコピペできない、差別化の源泉となる資源」だと述べています1

「ヒトによって生み出される価値は、模倣可能性が低く(他社にマネされにくい)、獲得が困難なものであるからこそ、他の企業と差別化する中核的な能力・技術(コアコンピタンス)ともなりえます。」1

しかし、優秀な人材ほど流動性が高く、魅力のない組織からは去ってしまいます。彼らをつなぎとめ(リテンション)、パフォーマンスを最大化するには、条件面だけでなく心理的安全性や信頼関係といった関係性の質を高めることが不可欠です。

3. 多様性の増大と求心力の必要性

かつてのような「阿吽の呼吸」が通じない多様なメンバーが集まる現代、組織には強い「遠心力(バラバラになる力)」が働いています。だからこそ、逆にメンバーを引きつける「求心力」が必要です。対話を通じて目指すゴールを握り合い、意図的に一体感を生み出す。組織開発は、多様な個を強いチームに変えるための求心力づくりのアプローチなのです。

組織開発の基本プロセス

今回は書籍『組織開発の探求』2より、組織開発の基本となる3ステップをご紹介します。

[2]より引用
  1. 見える化(What?):
    質問紙調査やヒアリング、対話などの方法を用いて自分のチームや組織の課題を可視化することです。書籍では、「組織の課題の多くは、日常的に『目にすること』ができないか、あるいは、多くの人々は『意識』をしていないものです。このように隠れているものを『顕在化』するのが『見える化』」だと述べられています。
  2. ガチ対話(So What?):
    見える化したデータや課題について、関係者全員で本音(ガチ)で話し合います。ここでは無理に意見をまとめる必要はありません。普段は直視したくないような課題にあえて腹をくくって向き合い、お互いの意識や認識のズレや違いを徹底的にあぶり出すことが目的です。
  3. 未来づくり(Now What?):
    対話によって明らかになった違いを踏まえ、「これから自分たちの組織をどうしていきたいか」を当事者全員が自分事として決めていきます。ここでは単なる対話から合意形成のための議論へとシフトし、具体的なアクションプランへと落とし込みます。
[2]より引用

組織開発で直視すべきは、図のような氷山の下です。「ミスが多い」「会議が静か」といった現象(結果)の水面下には、必ず不信感や諦めといった真因が潜んでいます。『星の王子さま』に「大切なものは目に見えない」とありますが、組織も同じです。勇気を持って水面下の真因を見える化することこそが、組織開発の第一歩だと中原氏は語ります1

組織開発の具体的な手法・取り組み・フレームワーク

手法は大きく「診断型」と「対話型」に分けられますが、現場ではこれらを目的(ステップ)に応じて使い分けます。

診断型組織開発:データで現状を直視する

「組織には健康な状態がある」という前提に基づき、現状とのギャップ(病巣)を特定して治療するアプローチで、コンサルタントが医師のように外部から診断し、処方箋を提供するイメージです。

  • サーベイ・フィードバック:
    従業員意識調査や組織診断サーベイなどのデータを収集・分析し、それを普段言いにくいことを話し合うためのきっかけ(素材)として自分たちの問題を話し合います。

対話型組織開発:未来と意味を共に創る

近年注目されている手法で、診断(悪い箇所の特定)よりも、対話を通じて「新しい意味や未来」を創り出すことに焦点を当てます。

  • ワールド・カフェ:
    カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、メンバーを入れ替えながら対話を続ける手法です。少人数で話しやすい雰囲気を保ちながら、多くの人と交流できるので全員で話し合いを行ったような効果を得られます。
  • アプリシエーティブ・インクアイアリー(AI):
    問題点ではなく、組織の強みや成功体験に焦点を当て、それらが最大限に発揮された理想の未来に近づけるためのアクションを話し合う、ポジティブなアプローチです。
  • フューチャーサーチ:
    従業員、経営層、顧客など多様なステークホルダーが一堂に会し、過去・現在・未来について対話を行い、共通のビジョンを探求する大規模な会議手法です。

組織開発に役立つフレームワーク

組織の隠れた課題を見える化するのに以下のフレームワークが役立ちます。

  • マッキンゼーの7S:
    組織を「戦略・組織構造・システム」といったハードの3Sと、「価値観(Shared Values)・スキル・人材・スタイル(組織風土)」というソフトの4Sに分類します。失敗の典型例は、変更容易なハードだけをいじり、人の意識であるソフトを置き去りにすること。アプローチでは特に、中心にある共通の価値観(Shared Values)を軸に据え、戦略と風土、システムと人材スキルなどの整合性を点検します。ソフト面の変革を主導することで、ハード面の変更を絵に描いた餅にせず、実効性を持たせるのです。
  • G-POP:
    「Goal(ゴール)→Pre(事前準備)→On(実行)→Post(振り返り)」の4ステップを回すマネジメント手法です。もともとは個人の仕事の型ですが、組織開発ではこれをチームの共通言語として活用します。メンバー全員でこのサイクル(特に振り返り)を共有することで、互いの経験から学び合い、自律的に進化し続けるチームを作るためのフレームワークとなります。

自社で組織開発を行うための「7つの実践ステップ」

ここでは、社内の人事担当者やマネージャーが内部コンサルタントとして自社の組織開発を行うためのステップとポイントをご紹介します。中原淳氏が著書『人材開発・組織開発コンサルティング』で提唱する7つのステップ1をベースに、社内の現場視点に置き換えて解説していきます。

Step 1 出会う

組織開発は、相談を受けるか、自ら課題を見つけに行くことから始まります1。いずれにせよ、現場と協働するための信頼関係(ラポール)構築が第一歩です。

しかし社内で行う場合、すでに顔見知りであるがゆえに「あの人は管理部門の人だ(現場を知らない)」「評価に関わるから本音はいえない」といった、社内政治や既存のイメージが壁になることがあります。そこで重要になるのが「ステータスマネジメント」。これは、「高い専門性を示して『認知的信頼』を得つつ、親しみやすさを示して『感情的信頼』も得る」という、アメとムチ(権威と共感)の使い分けです。

1. 認知的信頼(専門家としての視座)
現場は目の前の業務に追われています。そこで正論を説いても「現場を知らないくせに」と反発されるだけです。有効なのは「経営層の動き」や「他部署の事例」といった、あなたのポジションだからこそ持つ情報を提供すること。「その情報は助かる」と実利を感じてもらい、専門家としての信頼を得ます。

2. 感情的信頼(人間としての共感・リスペクト)
一方で、ロジックだけでは人は動きません。ここで有効なのが、優れたリーダーが持つ謙虚さです。「手法には詳しいが、現場業務については素人(無知)である」と認め、教えてくださいと真摯に教えを請うこと。多くの名経営者がそうであったように、自分の弱みをさらけ出し相手をリスペクトする姿勢こそが、「この人と一緒にやりたい」という感情的信頼を生み出します。

Step 2 合意をつくる

信頼ができたら、プロジェクトの「合意形成(グリップ)」です。曖昧に進めると頓挫する難所です。

1. 関係者・当事者を早めに巻き込む
窓口担当者とだけ握っていても進みません。組織には最終決裁者もいれば、抵抗勢力もいます。これらキーマンを早い段階で同じテーブルに着かせ、認識を合わせること。「重要な人を誰一人取り残さない」のが鉄則です。

2. 判断を保留して聴く
社内の人間ほど「あの部署の問題はこれだ」と分かったつもりになりがちです。ヒアリングでは自分の解釈をぐっとこらえ、判断をいったん保留して聴きましょう。重要なのは、相手が課題をどう「意味づけて」いるかです。一見非合理に見えても、彼らの中には正当な理由(他者の合理性)があるはずです。

3. 文書で握る
最も重要です。社内の仲だからと口約束にするのは危険です。目的・スケジュール・役割分担(人事はどこまでやり、現場は何をするか)を文書化し、「共に課題解決を行う」という合意を形成しましょう。

Step 3 データを集める

「だいたいあそこが問題だろう」という予断を捨て、事実に基づいたデータを集めます。

まずは泥臭く現場へ行きましょう。聞いた話を安易に要約せず、リアルな感情が宿った「生声」をそのまま蓄積します。これにより課題の解像度が格段に上がります。一方で、アンケートなどの定量データは、全体傾向を広く浅くつかむのに役立ちます。単に平均を見るだけでなく、属性データとクロス(重ね合わせ)させることで、「特定の層に課題が集中している」といった事実が見えてきます。

これらをもとに、①ギャップ、②課題、③解決策、④期待インパクトの4点をセットにした「組織の見立て」を作り、対話フェーズへ進みます。

Step 4 フィードバック

ここが最大の山場です。単なる報告会ではなく、データを鏡に現状を直視し、「自分たちはどうなりたいか」を話し合って未来を決める場です。

1. 場をセットする(オーナーのコミットメント)
主役はあくまで現場の責任者(オーナー)です。冒頭でオーナー自身の言葉で「なぜ今集まるのか」「自分も課題に向き合う」という本気を語ってもらいます。トップが安全地帯にいては本音は出ません。

2. データを提示する(事実と解釈を分ける)
ここで「あなたたちの問題はこれだ」と断罪してはいけません。まずは強み(ポジティブ)から伝えて受け取る態勢を作り、次に「肯定的な回答が20%だった」という定量的な事実を鏡として提示します。解釈は押し付けず、「私にはこう見えますが、皆さんはどう感じますか?」と問いかけましょう。同時に、Step 3で集めた定性的な「生声」を届けることで、数字以上に現場の感情を揺さぶります。

3. データを対話する(I message)
提示されたデータをもとに、お互いの感じていることを共有します。「会社が悪い」といった他責ではなく、「私は(I)どう感じたか」という主語で語り合うルールにします。一人ひとりの主観を出し合い、認識のズレを探っていくことで、バラバラだった個人の意識が「私たち(We)」へと変わっていきます。

4. 未来を決断する(We message)
十分に対話したら、決断モードへ切り替えます。「で、私たちは何をするのか?」。重要なのはあれもこれもやらないことです。リソースは有限です。「これならやり切れる」と多くの人が思え、かつなるべく早く効果が見込まれるものに絞り込み、誰がいつやるかを合意します。決断の際に重要なのはメンバー自身が「実行したい」「実行できそうだ」と自己効力感を持てるかどうかです。

Step 5 実践する

対話で決まったアクションは、現場で実践されて初めて意味を持ちます。重要なのは、ワークショップなどのイベントで終わらせないことです。現場に戻って実践し、その結果をまた持ち寄って振り返る「リフレクション」の機会を設けます。この「実践→振り返り」のサイクル(経験学習サイクル)を回すことで、現場の学習能力が高まります。

[1]より引用

Step 6 評価する

取り組みの成果を評価します。ここでのポイントは、研修直後の満足度や売上だけでなく、数カ月後に「現場の行動が変わったか(研修転移)」を測ることが重要です。「会議の発言が増えた」といった行動変容や主観的な評価も大切にします。

Step 7 別れる

最終的ゴールは、あなたが手を引いても改善が回る自走化です。いつまでも支援せず、独自の会議ルールやマニュアル、振り返りの習慣といった「仕組み(置き土産)」を現場に残し、健全にフェードアウトすることが、組織開発の成功です。

自社で組織開発を行う際のポイント

ここまで、自分たちで組織開発を進めるステップを解説してきました。最後に自分たちで行う際に、陥りやすい3つの罠とその対策を押さえておきましょう。

  1. 「御用聞き」の罠
    現場から「研修をやってくれ」と言われそのまま手配する。
    対策: Step 2で「何のための施策か」という目的を握る。
  2. 「知ってるつもり」の罠
    「あの部署の問題は〇〇だ」と思い込みで介入し現場の反発を招く。
    対策: Step 3で客観データを集め、それを共通言語にする。
  3. 「やりっぱなし」の罠
    盛り上がるワークショップを行って満足し、現場に戻ると何も変わっていない。最も多い失敗パターンです。
    対策: Step 5で実践期間を設け、振り返りを仕組み化する。

まとめ:自走する組織を作るための仕組みの活用

組織開発は一過性のイベントではなく、組織の体質改善を目指す長いプロセスです。この7ステップを完遂するには、データ収集(Step 3)や継続的な振り返り支援(Step 5)など、人事やマネージャーに大きなパワーが求められます。

そこで有効なのが、チームタクトのようなツールの活用です。

  • 見える化の支援:日々の業務や振り返りのログ、AIによる組織分析レポートを通じて、組織の状態や関係性の質を定量・定性データの両面から見える化します。Step 3のデータ収集を日常的に行えます。
  • 実践の支援:独自メソッドである「リフレクション(振り返り)の型」を活用し、現場での経験学習サイクルを回すことを支援します。お互いの振り返りを共有し合うことで、対話のきっかけを生み出し、「やりっぱなし」を防ぎます。

組織開発は一朝一夕では成し遂げられません。まずは小さなチームから、データに基づいた対話と、日々のリフレクションを始めてみませんか?

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参考・引用文献

  1. 中原淳. 『人材開発・組織開発コンサルティング――人と組織の「課題解決」入門』. ダイヤモンド社, 2023.
  2. 中原淳, 中村和彦. 『組織開発の探究――理論に学び、実践に活かす』. ダイヤモンド社, 2018.

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